礼拝では今日まで詩篇を続けて開いてまいりましたが、この41篇で一度区切りをつけて、来週からは新約聖書の『使徒の働き』に入り、その後、また詩篇に戻ってまいります。どうして41篇なんて中途半端な数で区切るのかと不思議に思われるかもしれませんが、41篇の次の42篇の前に「第二巻」と書かれていますように、実は41篇で第一巻が終わりとなっています。詩篇は、全部で150の詩が五つに分けられていて、41篇で一つの区切りとなっています。
さて、今日は「裏切り」ということが出てまいります。人間関係は信頼で成り立ちます。信頼していた、親しい友人に裏切られるというのは、どれほど心を痛めることでしょう。詩篇には多くの「嘆きの歌」と呼ばれる祈りが出てきます。嘆きの理由は様々です。しかしこの詩篇の嘆きも大変に大きかったのではないか。そこには病があり、敵がいて、さらに親しいはずの友が自分を裏切る。そんな辛い詩篇です。しかし、この詩篇が第一巻を締めくくるに相応しい祈りなのです。神様は裏切られる苦しみさえも恵みに変えることがお出来になるからです。いつものように三つに分けて説教を進めてまいります。第一に「生かす神」、第二に「憐れみの神」、そして第三に「立ち上がらせる神」という順序でお話しさせていただきます。
1.生かす神(1〜3節)
いきなりですが、新約聖書の中でイエス・キリストが言われた言葉で、「あわれみ深い者は幸いです」という、山上の垂訓の言葉がありますね。どうして「あわれみ深い者は幸い」なのでしょうか。聖書が教えている幸いとは、単なる幸福とか幸運ではありません。神様との関係における幸いです。神様抜きに自分の力だけで幸いを手に入れるということではないのです。では、どうして「あわれみ深い者は幸い」なのか。それは神様が憐れみにとんだお方であり、神様のご性格に沿った人、あわれみに富んだ人に神様は必ず共にいてくださるから幸いなのです。詩篇41篇は1節で「幸いなことよ」と始まっています。第1篇も幸いなことよ、とまったく同じ言葉で始まっている。1篇では、御言葉を昼も夜も口ずさむ人、だから悪を離れ、したがって神様の御心に沿った正しい生き方をする。それが幸いな人です。41篇の1節は、「弱っている者に心を配る人は」幸いだと語っています。心を配る、他の翻訳では、思いやる、と訳されています。旧約聖書の律法の中でも社会的な弱者を思いやることが神様の御心であることが教えられています。そのような人が、今度は自分がわざわいに陥ったなら、神様がその人を助け出してくださるのです。
コロナの問題が始まったころ、感染した人への偏見やいじめが社会問題化したことがあります。やがて感染者が増えていくと、批判していた人が感染することも起きてくる。そのとき、今度は自分が周囲から非難されるかもしれない、ということが分からないのです。1節の弱っている者という言葉には詳しい説明がありませんから分かりませんが、2節や3節で病気のことが語られていますから、病気で弱っているのかもしれません。教会でも、何人もの方が病気のため辛い思いをしておられます。シロアムの会の方々を中心として、お見舞いのハガキを出したり、それから今は出来なくなっていますが、病院を訪問してくださる方々もおられる。そのような奉仕を、牧師としても心から感謝しているのですが、誰よりも神様がそのような愛の働きを喜んでおられるのです。2節で、そのような人を神様が見守り、「生きながらえさせ」と書いている。最近の翻訳では単純に、主は彼を生かす、としています。弱い人に心を配ったから生かしてくださるのでしょうか。違います。神様は私たちに命を与えるお方です。今、生きているのは、神様に生かされている。それを忘れると自分の力で生きていると思い、高慢になる。本当は、神様が生かしてくださっている。神様がくださった命なのですから、神様の御心に沿った生き方をするのです。それが憐れみなのです。
神様はただ生かしているだけではない。3節を新共同訳で読むときに、病の床にいる人を立ち直らせる、と書いています。病気からの癒やしという意味もありますが、また単に肉体的な病気だけではない。心が疲れて病んでいる。失敗して倒れてしまっている。そこからも立ち上がらせてくださる。そして罪から救ってくださり、立ち上がらせてくださった。3節で「病むときに彼を全く癒やす」と訳されているのは、直訳をすると、彼の寝床を全てひっくり返してください、という、珍しい表現です。おそらく寝床を畳んで起き上がるということだと思います。一人の寝たきりの人を四人の友人がイエス様の所につれて来た。その友人たちの信仰を見て、イエス様は、その人の罪を赦し、そして癒やしてくださった。寝床を畳んで立ち上がりなさい。罪にしろ病にしろ、どんな悩み苦しみでも、その寝床に留まるのでは無く、立ち上がらせてくださる、その神様が一緒にいてくださる。それが幸いなのです。このお方を信頼して祈り続けましょう。
2.憐れみの神(4〜10節)
この信仰による祈りから、4節は切実な祈りにかわります。
4 私は言った。「主よ、あわれんでください。私のたましいをいやしてください。私はあなたに罪を犯したからです。」
この人は、祈る中で、自分の罪に気がつかされた。こんな罪人を神様は助けてくださるだろうか。ですから「憐れんでください」と祈るのです。様々な困難があります。病気や仕事や人間関係。でも、最も危機的な状況は、神様との関係が切れてしまう。その危機をもたらすのが罪です。罪があると神様を信頼して祈ることができなくなる。神様から見放されたのではないか、と不信仰に陥ってしまう。祈れなくなったら、ただ悩みの中に埋没するだけです。
さらに自分の罪の結果なのか、この人は悲惨な状況に陥る。それが裏切りということです。敵が悪口を言うのは、良くあることです。でも、見舞いに来てくれた人が、陰では悪口を言っていると知ったらどうでしょう。人間不信に陥ります。それでも、あの人、あの人だけは信頼できる。そう思っていた友達が裏切る。それが9節です。
9 私が信頼し、私のパンを食べた親しい友までが、私にそむいて、かかとを上げた。
同じ釜の飯を食った親しい友人が裏切る。どれほど心が傷つくことでしょう。そんなヤツ自身にも罪があるでしょう。でも、そのような人間関係になってしまった原因の一部は自分の罪にもあり、人間関係は壊れていってしまう。
さて、9節の言葉を読んで気がついた方もおられるでしょう。これは福音書の中で、弟子たちがイエス様を裏切ったときに引用された、キリストを預言する言葉です。ユダは裏切りで有名ですが、他の弟子たちもイエス様を見捨てて逃げた点で五十歩百歩です。この詩篇の作者は、自分の罪に心当たりがある。でもイエス様は何の罪も犯していない。弟子たちを最後まで愛し抜かれたとヨハネの福音書は告げています。それなのに裏切られ、民衆にも裏切られ、十字架につけられた。ところが、神様は、その十字架に私たちの罪を置き、イエス様を身代わりとして、私たちを救ってくださった。なぜか。私たちには救っていただけるような良いものは何もない。ただ、神様の憐れみの故です。この詩人は、4節で「あわれんでください」と祈り、10節は、「あなたは私を憐れんでください」と、ただ神様だけが憐れんで下さることを信じて祈るです。私たちも、神様に祈り願えるような人間ではない。だから神様の憐れみを信じて、憐れみにすがるように祈るとき、神様は私を立ち上がらせてくださるのです。
3.立ち上がらせる神(10〜13節)
最後に10節の後半から見て参ります。神様が立ち上がらせてくださったなら、「わたしは彼らに仕返しができます」。ちょっと物騒な言葉です。テレビでも千倍返し、なんて台詞がありましたが、仕返しはクリスチャン的には良いのだろうか、と考えます。違う翻訳聖書では「報いる」と、言い方をマイルドにしていますが、報復するということだと、おんなじです。この言葉の正確な意味は「シャローム」という言葉に関連しています。平和という意味が使われることが多いですが、時には、したことへの報い、という意味もある。あわれみの神は、私たちが憐れみ深い行為をしたときに、そのままで放っておくのはいけない。その行いに報いることを考えるお方です。私たちが何かしてもらったらお礼をしたり、子供が良いことをしたら褒めてあげようと思うのと似ています。ですから悪を行ったり、憐れみの無いようなことをしたら、それに対しても報いるお方です。ただ、その報いを自分でしようとすると、個人的な復讐になってしまう。でも、立ち上がらせてくださった神様の御心を考慮して、たんなる自分の復讐心ではなく、神様の栄光が顕されるようにする。いいえ、神様が行ってくださるなら、神様のシャロームが実現するのです。
この詩人は10節、11節では、まだ敵に対する怒りや恨みが強かったのかもしれません。でも、最後の結論に至るとき、神様が本当に求めておられるのは、誠実だと気がつかされる。12節。
12 誠実を尽くしている私を強くささえ、いつまでも、あなたの御顔の前に立たせてください。
誠実という言葉にも様々な意味があり、完全という訳、口語訳や新しい聖書協会共同訳は「全き者」としています。違う文脈では、健康とか、あるいは成熟というニュアンスもある。感情のままに相手を憎むのではなく、神様の御心を知って、それに従う。それが成熟したキリスト者です。この人が成熟を目指して生きるとき、神様が支えてくださる。自分で自分を完全なものにすることは出来ません。成長しても、支えておられるのは神様だという信頼が大切です。そして、「御顔の前に立たせてください」。旧約聖書の中で「全き者」と言われた人、例えばヨブは全き人だったと言われた。それはいつも神様の前に生きたからです。アブラハムも神様から「全き者であれ」と、言われたけれど、それは「私の前を歩みなさい」と言われた後です。神様の前に立ち続け、神様の顔の前に歩み、神様と共に生きる。それが成熟したクリスチャンの目指すところであり、それが幸いな人なのです。
最後の13節は、ここまでと少し違って、第一巻の結びの言葉、神様を崇める頌栄と呼ばれる賛美で、最後はアーメンで終わっています。
13 ほむべきかな。イスラエルの神、主。とこしえから、とこしえまで。アーメン。アーメン。
私たちを生かし、立ち上がらせてくださる、憐れみの神様こそが永遠にほむべきお方。そのお方に目を向け崇めて生きること、それが詩篇の祈りの第一の結論なのです。
まとめ.
詩篇を通して、苦難の中で祈っていった信仰者たちを何回も見てまいりました。どんな苦難の中を通っても、そこで神様を信頼するなら、神様はどんな問題でも、病でも悩みでも、そして裏切りでさえも、恵みに変えてくださる。なぜならイエス様がその悩みを一緒に体験してくださり、でも罪の無いお方が私の代わりに罪を背負ってくださって、私にはただ救いの恵みが与えられた。だから感謝と賛美が生まれてくるのです。
人生の中で、時には裏切られるような痛みを受けることもある。でも、そのとき、この痛みをイエス様も受けておられたんだと思ったとき、自分もイエス様と共におらせていただいていることを感じる。だから、決して無意味では無く、どんな苦難もイエス様を身近に知る機会とし、救いの恵みをもう一度味わう時としてくださるのです。お一人お一人が受けている困難、それはイエス様もご存じであり、だから私たちはイエス様のお名前で祈るのです。これからも困難の中でも祈り続ける信仰者とならせていただきましょう。
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